「ルノワール−伝統と革新」展 国立国際美術館(産経新聞)
2010年 05月 12日
■絵画技法を科学的に分析
「幸福の画家」と呼ばれ、明るく生命感あふれる裸婦などの人物画で親しまれるピエール=オーギュスト・ルノワール。印象派の巨匠に位置づけられるが、その画業の実際は常に伝統に回帰しつつ様式の模索を続けるものだった。国立国際美術館(大阪市北区)で開かれている「ルノワール−伝統と革新」展は、終生変革をなし続けた画家の姿を、代表作など約80点で浮かび上がらせる。
1874年から開かれた印象派展覧会にルノワールは3回出品。印象派の洗礼を受けたものの、その後、印象主義的手法の「限界」に行き着く。ルーブル美術館での模写から始まる彼の画業には、むしろルーベンスら過去の巨匠の作品こそ常に変わらぬあこがれだった。画家としてのスタートから晩年の作品までを紹介する今展では、いつも伝統に立ち返りつつ画風を刷新し続けた、作家の軌跡が見どころとなっている。
ルノワールが「芸術の本質的な形式」として、熱情的に描いた裸体画も大きく変化する。イタリア旅行(1881、82年)を機に古典的様式に向かったルノワールの絵は、輪郭線のきつい人体と背景の不調和が課題になる。これに対し「水のなかの裸婦」(88年)では輪郭線をやわらげ、人体の陰影に水面の色彩を用いて、背景との調和を試みる。1910年ごろの「泉」になると、人体と背景が画面で多用される曲線により自然な融合をみせる。
同展では光学手法で「水のなかの裸婦」など作品の画材や描法を解析した調査結果も公開。科学の目でもルノワールの絵画技法にせまっている。(坂下芳樹)
6月27日まで(月曜休館)。国立国際美術館TEL06・6447・4680。
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| 2010-05-12 14:22